福井城

福井城の西三の丸にあった藩主の御座所の玄関付近を、南東の方から見て描いた図です。現在の福井市役所北側の中央公園（福井市大手3丁目）付近にあたり、屋根は本丸御殿と同じ赤瓦で葺かれていたことがわかります。16代藩主であった松平慶永（春嶽）もここで居住をしていました。図の左端に見えるのは西不明門（にしあかずもん）であり、笏谷石（しゃくだにいし）製の瓦で葺かれていました。

城下町のような多くの人が住む都市には、上水道の整備が必要不可欠です。福井城では、本丸から南東側の屋敷は井戸を掘り、地下水を利用していましたが、本丸の北側から東側の屋敷では、遠く九頭竜川の水を取り入れて整備された上水道を利用していました。これが芝原上水（しばはらじょうすい）です。
　芝原上水は福井城東北の入口、志比口（しひぐち）から城下に入り、いくつかの支流に分かれて、城下を潤しました。今残っている溝は、この上水が通った水路の跡です。各屋敷にはこの水路から木や竹で作られた樋（ひ）を通して、水が引き込まれました。

かつて福井城本丸の周囲に幾重にもめぐらされていた堀の中で、最も幅が広かった堀のことを百間掘といいます。平成14年（2002年）に福井駅西口地下駐車場整備事業にともなう埋蔵文化財調査を実施し、中央大通りにおいて出土した石垣を再現、展示を行っています。
　石垣の再現には福井駅周辺で出土した石材を用いており、当時の石垣の上面は、現在の歩道面よりも1mほど下がった部分にありました。
　また、県庁入口交差点を挟んだ道路4カ所に、当時の百間堀の幅がわかるタイルが敷かれており、百間堀の大きを体感することができます。

福井城の南部に位置する鳩門とその西の方に広がる百間堀を、南の方より現在のJR福井駅前あたりから見て描いた図です。鳩門は百間堀の南端、現在の北ノ庄城址・柴田公園（福井市中央1丁目）付近にあった城門で、漆門とも呼ばれました。百間堀の背後には、笏谷石製の瓦で葺かれた二の丸・三の丸の二重櫓と本丸の三重櫓を望み、壮大な城であったことがわかります。

舎人門（とねりもん）は、福井城の外堀に設けられた門の一つです。「舎人門」という名は江戸時代の終わり頃（19世紀中頃）の様子を描いた「福井城下絵図」にでてくる名称で、ほかにも清兵衛町見附御門（せいべいちょうみつけごもん）、江戸町口御門、御泉水裏御門などと呼ばれていたようです。

北ノ庄城址柴田公園は、柴田勝家が築造した北ノ庄城の一部が考古学的発掘により初めて検出された遺構の上にあります。徳川期に結城秀康がその遺構を大胆に改変し福井城を造営していった様子も地層の切り合いの中で確認することができます。
また、日向門（ひゅうがもん）は、福井城三の丸の南側の曲輪にあった門です。すぐ北東は、現在の北ノ庄城址公園の一画にあたります。公園の整備では、発掘調査で確認された日向門礎石の痕跡を見ることもできます。

養浩館（ようこうかん）は福井藩主松平家の別邸で、江戸時代には御泉水屋敷（おせんすいやしき）と称されていました。庭と密接な関連の基に建造された池の周囲の書院建築の数々と、広大清澄な園池を主体とした回遊式林泉庭園（かいゆうしきりんせんていえん）は、江戸中期を代表する名園の一つとして広く知られていました。
　福井大空襲で建造物は焼失しましたが、昭和57年（1982年）に国の名勝に指定されたことが契機となって、文政6年（1823年）の「御泉水指図」により、近年整備が行われました。現在では、建造物・池だけでなく玉砂利・石組・樹木も四季折々に風趣が漂い、庭園の趣を楽しめます。

「福の井」は慶長6年（1601年）の北ノ庄城築城当時からあった井戸と考えられています。安永4年（1775年）の「御城下絵図」の天守台には「福井」と記された井戸が描かれています。この頃には一般に「福の井」と呼ばれ、福井城の特別な井戸となっていたことがうかがえます。
　昭和23年（1948年）の福井地震では、本丸の石垣がいたる所で崩れました。「福の井」が崩壊することはありませんでしたが、井戸の形が大きく歪んだことから、震災後に井戸枠が大きく作り変えられました。 　平成29年（2017年）3月に、井戸の石積みや井戸枠を福井地震前の大きさに復元し、井戸の上屋（ヒノキ造り、銅板葺き）や釣瓶を新たに設置しました。（深さは約5.7m、水深は約1.9m）

藩校明新館の外国人教師として招かれた、米国人グリフィス（理・科学）と英国人ルセー（語学他）の客館、通称「異人館」を撮影したものです。明治4年（1871年）9月に福井藩が城下浜町に建てた最初の洋風建築です。画像の右手の建物がルセー館で、左手がグリフィス館です。竣工記念に一般公開した際には、3日間で約2万人の見物人が集まったといいます。
　平成27年（2015年）10月に、グリフィスの邸宅だった洋館をよみがえらせた「福井市グリフィス記念館」がオープンしました。グリフィス記念館は、新たなまちなか散策の拠点としてにぎわいの創出を目的として整備され、グリフィスの功績等を紹介しています。

藩医の長男として生まれた橋本左内は、藩の医学校で漢方医学を学んだのち、16歳で大坂の緒方洪庵が開いた適塾へ入門し、蘭学を学びました。その後、さらなる勉学のため、江戸に赴いた左内は蘭学や漢学を学ぶ一方、西欧の本を次々と読破して、世界へと視野を広げました。左内が15歳のときに自らが生きていく上での心構えを綴った、5項目の誓いからなる「啓発録」は、彼の出発点であり、後の活躍の礎にもなりました。
　左内は積極的に開国を推進する立場で活躍し、また、一橋慶喜（徳川 慶喜）を次期将軍にすべく、藩主・松平春嶽とともに奔走しましたが、それに対立する井伊直弼が大老に就任すると、世に言う「安政の大獄」で捕らえられ、安政6年（1859年）10月7日、26歳の若さで斬首されました。
　左内の遺徳を 顕彰するため、設けられた左内公園には、橋本左内とその両親の墓があります。敷地内にある左内の銅像は市民からの寄付により、昭和38年（1963年）に建立されたものです。

福井城本丸の内堀に架かる御本城橋とその周辺の様子を、西の方から見て描いた図です。現在の福井県庁南側付近の場所に当り、図の右手の建物が七ツ蔵であり、その左側に厩が設けられていました。厩（うまや）の後方には二の丸の二重櫓が見えます。手前の御本城橋付近の路上には、供を連れて本丸へ登城する裃（かみしも）姿の武士たちが描かれています。

福井城下の南を流れる足羽川に架けられていた九十九橋（大橋）を、東の方から見て描いた図です。九十九橋の北側は木造で、南側は特産の笏谷石を用いた石造であり、半石半木の奇橋として当時有名でした。図の右手の門は北詰にあった照手門で、左手の門は南詰の小石原門（木戸）です。左手の河原に広がる桃林は花の盛りを迎えています。なお、橋を渡り始めた一団は、江戸へ参府するために福井城を発駕した大名行列です。

鉄門（くろがねもん）前の大名広路（小路）に面する武家屋敷を、南東の方から見て描いた図です。大名広路は現在のフェニックス通り（旧大名町通り）と概ね重なり、道幅は10間（約18ｍ）ありました。図の左端から酒井家、狛家（南狛）、狛家（北狛）、本多家（府中）と、家老職などを勤める上級家臣（高知席）の屋敷が建ち並んでいます。御殿の屋根上に黒くみえるのは、火見櫓（ひのみやぐら）です。狛屋敷の前を進んでいるのは、鉄門に向かう上級家臣の登城行列でしょう。

愛宕坂（あたござか）は、愛宕山(明治以降は足羽山)にあった愛宕大権現社への参道であった階段坂です。現在は福井市の歴史がみえるまちづくりの拠点として整備され、坂の途中には橘曙覧（たちばなあけみ）記念文学館、愛宕坂茶道美術館があります。足羽山への登り口としては、水道記念館横から登る百坂もあり、頂上付近で愛宕坂と合流します。また、百坂の途中にある横坂も愛宕坂に結ばれています。
　この横坂からは福井市内が一望出来ます。頂上にある足羽神社は継体天皇を主神とする古社で、鎌倉時代以降、武家の崇敬厚く、戦国時代には朝倉氏から社領の寄進をうけ、また江戸時代には福井藩主・松平家から厚く崇拝されていました。境内のシダレザクラは樹齢約350年で、市の天然記念物に指定されています。

大名広路に面する鉄門（くろがねもん）の正面を西の方から見て描いた図です。現在の福井県繊協ビル（福井市大手3丁目）の北側にあった城門であり、上級家臣の屋敷のある大名広路から、福井城本丸に向かう際の最初の関門に当り、部材にも鉄板を用いるなど堅牢でした。門後方の城内には樹木が茂っている様子がうかがえます。

瑞源寺（ずいげんじ）は、臨済宗妙心寺派に属する禅宗寺院です。今から約1250年前の天平宝字2年(758)に泰澄大師によって、現鯖江市吉江に創建されたと伝わっています。その後、荒廃しましたが、江戸時代に入って第5代藩主松平昌親（第7代藩主松平吉品公）が復興、現在地に移転しました。
本堂、書院が福井城本丸御殿の唯一の遺構で、本堂は御小座敷を、書院は大奥御座の間を移築・再建したもので、県の文化財に指定されています。毎年9月中旬には参道の両側いっぱいに萩の花が咲き誇り、 「萩の寺」としても親しまれています。

福井城の西の外郭にあった桜門内の様子を描いた図です。大馬出とも呼ばれ、いわば福井城の大手門にあたります。この門の屋根も笏谷石（しゃくだにいし）製の瓦で葺かれ、内部は枡形構造をしていました。図の左手の門脇の土居には、門名の由来となった桜の樹木が生えています。門の右手にみえるのは佐野家の屋敷です。毎年正月14日に催された馬威し（うまおどし）の行事は桜門内から開始され、藩主が在国した折には佐野屋敷でその模様を見物した事が知られています。

由利公正は、幕末・明治期に活躍した政治家です。 文政12年(1829)、現在の福井市毛矢１丁目に福井藩士三岡義知の長男として生まれました。初め石五郎、後に八郎、公正と改名しました。また、明治3年（1870）以後は、先祖の旧姓の由利を名乗りました。 　横井小楠に師事し、藩の財政建て直しを含む、藩政の改革に貢献しました。 　明治新政府の成立後は太政官札（新政府の発行した最初の紙幣）を発行するなど、財政基盤の整備や、「五箇条の御誓文」の原案となった「議事之体大意（ぎじのていたいい）」を作成しました。 　その後、東京府知事となり、銀座通りの整備等を行いました。 　また、民撰議院設立建白書にも名を連ね、明治42年(1909)に、81歳で亡くなりました。

三の丸の南西部にあった下馬門を西の方から見て描いた図です。現在の福井市中央1丁目、福井西武の北側にあった城門で、笏谷石（しゃくだにいし）製の瓦で葺かれた表門と二階建ての櫓門からなり、瓦御門や山里口御門など城門と同じように枡形の形式になっていました。門の名称からもわかるように、馬で登城する武士はこの門前で下馬して、徒歩で城内に向かいました。

新橋付近より足羽川に面する武家屋敷を西の方から見て描いた図です。新橋とは幕末期に架橋された幸橋のことを指し、同じ川に架かる九十九橋（つくもばし）（大橋）に対する呼称として用いられました。図の左手前に見えるのは酒井家で、右奥は芦田家であり、いずれも家老職を勤める上級家臣（高知席）の屋敷でした。