尼崎城

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
2枚とも大正～昭和戦前期（1912～1945）の姿を撮影した絵はがきです。
開明橋は、現在も庄下川の東西を結ぶ橋として庄下川の南に位置しています。
１枚目は、開明橋から見た庄下橋の写真です。
右端に写る石垣は尼崎城西三の丸の石垣です。
2枚目は、当時の開明橋の様子です。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
写真の社殿は明治末～大正期（1900頃～1926）に撮影されたものです。現在も「尼のきふねさん」と親しまれています。
貴布禰神社は、江戸時代に2度移転しており、現在に地に落ち着いたのは1715（正徳5）年のことでした。
主神は海人の守護神であり、雨乞いの神様でした。
尼崎城下の鎮守として、旱魃や幕末の黒船来航の時には藩のために祈祷が行われました。
夏祭りにはだんじりが出て賑わいます。
2枚目は、貴布禰神社の北側にかつてあった「神苑（神社境内の庭園）」を写したものです。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
尼崎城のあった江戸時代、尼崎は播磨灘より瀬戸内海一帯で獲れた魚が水揚げされる、一大漁港でした。
尼崎の魚は堺の魚とともに、大阪市中にも出回りました。写真左側、手前の漁船（打瀬船）の奥に移る建物が魚市場で、現中在家町4丁目付近にあり、東西43間（約80m）の規模でした。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
写真は昭和4年（1929）頃に撮影された「阪神国道」（現国道２号線）に架かる玉江橋です。
大正期（1912～1926）を迎えると、自動車・自転車・荷馬車の増加により、大阪ー神戸間の市街地を結ぶ旧国道の拡充が望まれるようになりました。
大正8年（1919）に兵庫県会が新国道建設を議決し、同11年には内務省が建設地を決定、同15年（1926）12月25日に「阪神国道」が開通しました。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
尼崎城下の西側を限る堀。江戸時代の記録によれば、幅10間（約18ｍ）、深さ6尺（約1.8ｍ）ほど。
大正期にはまだ旧態を残していましたが、現在はかつて堀にかかっていた橋（「玄番（蕃）堀橋」）の親柱が残るのみとなっています。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
寺町にある臨済宗大徳寺派の寺院。
大物町にありましたが、近世尼崎城築城にともない元和年間（1615～1624）に寺町に移転したと考えられます。
廣德寺は、豊臣秀吉にまつわる伝説が残る寺です。
その伝説は、「中国大返し」の際、明智光秀の伏兵に襲われた秀吉は、廣徳寺に逃げ込み、さらに隣の栖賢寺に逃れた、というもの。
さらに機転をきかせた秀吉は、髪を剃って坊主に変装、他の坊主に紛れて寺の台所で味噌をすり、難を逃れたとされます。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
近世尼崎城と城下町はこの庄下川の河口両岸に位置しており、城の外堀の役割も果たしていました。
庄下川に架かる橋上に阪神電気電鉄（阪神電鉄）の線路が見えます。絵はがきは、線路より北西から、南東にカメラを向けて撮影した風景です。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
この付近は古来、「浦初島〔うらのはつしま〕」と呼ばれ歌に詠まれる名勝地でした。
初嶋大神宮の名は、この「浦初島」に由来すると言われています。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
市制施行当初、尼崎市役所は旧城郭内南浜（現南城内）の尼崎町役場をそのまま庁舎としていましたが、行政需要の増大と職員増加に対応するため、新庁舎建設が計画されました。
大正8年（1919)、旧城郭内二の丸（現南城内）の土地を買収し、同11年（1922)4月に竣工した新庁舎が写真の建物です。
この新庁舎もすぐに手狭となりましたが、資材・資金難により新たな庁舎の建設は実現しませんでした。
終戦後は尼崎国民学校（現市立琴ノ浦高校）を廃校とし、校舎を転用しますが手狭となり、新庁舎建設が計画されます。
ようやく昭和37年（1962）に現在の東七松町に落ち着きました。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
近世尼崎城築城にともない元和年間（1615～1624）に寺町へ移転したと考えられています。
境内には、領国肥後での失政を羽柴秀吉に責められ天正16年（1588）閏5月14日に尼崎で切腹した佐々成政の墓があります。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
寺町にある法華宗（本門流）の大本山。
京都本能寺とならんで法華宗の大寺であった同寺は、中世から広い寺域をかまえ繁栄したものと推測されます。
本能寺が洛中の布教伝導を目的としたのに対して、本興寺は教学の根本道場であり、寺内には勧学院という教育機関が設置されていました。
近世尼崎城築城にともない、城地にあった本興寺は1617年（元和3）に寺町に移転したと考えらます。
現在も市域の寺院のなかでは最大の規模を誇り、日蓮の戒刀と伝えられる数珠丸恒次や、日隆上人坐像をはじめ建物・石像遺品など数々の文化財を今に伝えています。
　２枚目は昭和9年（1934）5月、本興寺境内で開催された植木市の風景です。
檀家の方々が淡路島からも集団で船に乗り、見物に来ていたそうです。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
明治15年(1882)に尼崎藩主松平氏の祖、桜井内膳正信定を祭神として、旧藩士の有志が、旧尼崎城内の西大手橋東詰に建立し、その後国道43号線敷設のため昭和36年(1961)に現在地に遷宮しました。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
「三和に行けばなんでも揃う」が合言葉。
古くから地元市民の台所として親しまれてきた三和本通商店街を取り囲むように、個性豊かな商店街が隣接しています。
古写真とは少し様相が変わっていますが、現在も、サンロード・三和本通商店街・三和市場の三つの商店街の入り口が隣り合うめずらしい風景が残っています。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
写真は、現在も尼崎市立歴史博物館の敷地内にひっそりと石碑を残す尼崎城天守跡の昭和6年（1931）ごろの様子です。

出典は、摂津12郡の古跡・名勝等地誌情報をさし絵・和歌をふんだんに盛り込んで紹介した『摂津名所図会』。
手前は広徳寺から如来院までの寺町の風景で、「せいけん寺（栖賢寺）」・「海かん寺（海岸寺）」など、現在は移転ないし廃寺になっている寺院も描かれています。
奧に描かれているのが尼崎城です。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
明治37年（1904年）8月の尼崎車庫完成の前後に、阪神電鉄の尼崎発電所として旧城郭内（現北城内）に建設された、市域ではめずらしい明治期の洋風建築です。
煉瓦造り2階建て、延面積345.2坪。
煉瓦は英国から、鉄製アングルは米国から輸入し、英国人技師によって建てられたと伝えられています。

〈古写真で振り返る尼崎の風景〉
かつて尼崎城の本丸のあった場所に、尼崎市立高等女学校の校舎として、昭和13年（1938）に竣工した建物。
現在は、校舎がリノベーションされ、尼崎市立歴史博物館として、尼崎の原始・古代から現代までの歴史をわかりやすく伝えています。
また、尼崎地域の様々な史料を収集・保存し、閲覧できるコーナーもあります。

出典は、摂津12郡の古跡・名勝等地誌情報をさし絵・和歌をふんだんに盛り込んで紹介した『摂津名所図会』。
左下は城下町を囲う堀ですが、現在は埋め立てられています。
貴布禰神社が、広大な境内では、祭礼のほか、見せ物興行、さらに相撲・浄瑠璃・「造り物」・「生け花（未生流）」の奉納など、様々な催しが行われました。
なかでも奉納相撲は、尼崎藩主の若君から家老・用人・目付・郡代・奉行など連日にわたって見物していたという記録が残っています。

出典は、摂津12郡の古跡・名勝等地誌情報をさし絵・和歌をふんだんに盛り込んで紹介した『摂津名所図会』。
本興寺は法華宗本門流の大本山です。江戸時代はじめ尼崎城築城にあたり、現在地に移転します。
移転に際し、十六坊あった塔頭は八坊に減っていますが、寺町の中ではもっとも大きな境内敷地を持っていました。
法華宗本門流の学問の道場「勧学院」が設けられ、全国各地より多くの学僧が集いました。

出典は、摂津12郡の古跡・名勝等地誌情報をさし絵・和歌をふんだんに盛り込んで紹介した『摂津名所図会』。
右奥の大物社（だいもつのやしろ）は、現在の大物主神社です。
まわりの町並みは尼崎城下八町のひとつ、「大物町」を描いたもの。
手前の川は大物川で、大きく描かれた橋は大物橋です。
大物橋は大通り（中国路）に架かる橋でした。大物川は現在埋め立てられ、大物緑地となっています。